




少し昔の人びとの日常を知ることは楽しいものです。
挿絵画家、舞台装置家として大正から昭和初期にかけて活躍した小村雪岱。
写実や個性ということにほとんど執着しなかった雪岱は、表情のなかにある微かな趣き、僅かに見える情感を現すことを大切にしていました。
装幀や挿絵のこと、女性や流行のこと、舞台装置のこと、好きな仏像のこと…飾らない穏やかな文体からは、消えゆく江戸情緒の光景がゆったりと浮かびあがります。
「あれを思ひこれを考へてもうどうにも配色の思ひ浮かばぬ時私は花を思ひ出すのです。ーー本当に造化の有難さです。花を思ひ出しながら衣装を選んでゆけば大抵失敗はないと、いつも私は考へて居ります。」
発行:幻戯書房
発行年:2018年
サイズ:四六判
ページ:269p